主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと

介護

【遂に野菜を蒸し始める】

2018年7月20日真夜中に、ごそごそ台所で主夫ロマンティックに変身──。夜更けに買物に出ると、普段あまり寄る機会のない業務スーパーのネオンサインが目に留まった。──久しぶりに牛すじ煮込みでも作るか?──冷凍食品をまとめ買いするにはとても便利な…

【新のお盆2018】

2018年7月16日新のお盆が終わろうとしている。母が東京に建てた墓のあるお寺さんでは、この時期、例年法要が行われている。広い仏殿で心を鎮めるのもいいが、どうもぼくは、こうしてひとりを選んでしまう質らしい。京都で大家族の長男に嫁いで、日々…

【この上なく誘惑に満ちた背徳の嗜み】

2018年7月15日これは祝福か? それとも呪いか?──見事だ──ビギナーズラックというよりも、これは、育まれた才能が開花してしまった瞬間というに相応しい出来栄えではないか?出来立ての湯気が立ち込めるパンを頬張る──。なぜだか、禁断の扉を開けてし…

【初めての食パン作り】

2018年7月15日暑い──。──この天からの恵みを活かす術はないか?──まわらない頭でそんなことをぼんやり思い浮かべていると、冴え渡るアイデアが浮かんだ。──そうだ! パンを焼こう!──といっても、焼いたことはない。だが、随分前に、道具と材料を揃え…

【ぼくのなかに棲む母】

2018年7月11日午後、いつもの指定した時間帯に荷物を受け取った。ドライバーの方と二言三言交わして挨拶をする──そうした日常の何でもない瞬間に、気づくことがある。──ぼくのなかに、母がいる──ぼくのすべては、母からできている。母がしてきたこと…

【母の献身に応える術】

2018年6月29日28時──。作り置きの白菜の浅漬けサラダを仕上げて後片付けを終えたところでこの時間になった。リハーサルからの帰り道に、疲れた身体に鞭打って買物に寄った。今夜からの食事をつくりおきたかったのだけれど、寝不足には勝てず、帰宅後…

【ただそこにいること】

2018年6月26日真夏を思わせる陽気に満たされた1日──仕事の現場下見の帰りに、母に会いにいった。ユニットに入り、職員の方に挨拶をすると、最近の母の様子を知らせて下さった。「毎日歌われていて、歌詞の意味も教えて下さいます」〈誰も寝てはなら…

【もう一度、音楽のある暮らしを】

2018年6月21日母が入居している特別養護老人ホームは、全部屋個室となっている。ならば、その環境を活かして、母に再び、音楽のある暮らしを──入居前からそう決めていたことを、ようやく実行した。当初は、使いやすいように、ポータブル型のCDラジカ…

【言葉にならない意思表示】

2018年6月15日梅雨らしい雨降りの日──母に会いに行ったのは、10日ぶりだった。──明らかに気持ちがざわついている──全力を出し切ったあとに襲い来るいつもの波が押し寄せてきている。これまでとは比べものにならないほど、今の波は穏やかであるのだが…

【母の笑顔があるうちに】

2018年6月5日いくつかの大仕事を終えて、久しぶりに母に会いに行った。今日はぼくのことを思い出せなかったようだけれど、居室に入るなり手を上げて迎え入れてくれた。「やぁやぁ」いつもの母だった。この前一緒にみた《サーカス》のこと、市原湖畔美…

【果たすべき約束がある幸運】

2018年6月4日6月3日──市原湖畔美術館での、ひびのこづえ展パフォーマンスプログラム、無事、閉幕。未だ経験のない、ながいながいロードを終えた気分だった。そのエンディングに相応しい極上の上演と、まるで映画のエンドロールを眺めているような助…

【願いが叶えられた日】

2018年5月23日今日は朝から緊張していた。──母と《サーカス》を観に行く──子供帰りが激しいこの頃、本番に支障を来すような迷惑を母が起こさないか? または、途中で予想もしていないような体調不良が起きないか?あらゆるケースを想定しながら、母に…

【新しいたぬき】

2018年5月22日明日、一緒に楽しむ予定の森山開次《サーカス》鑑賞へ向けて、母の様子を伺いに行った。今日は午後の昼寝の時間だったのか、母は入居以来、初めて居室で過ごしていた。先に渡したラジオを聴きながら、ベッドに寝転がって寛いでいた。明…

【森山開次《サーカス》2018年再演 初日】

2018年5月19日初日の幕が開けてしまえば、ぼくの出番はおしまい。あとは、劇場の音響チームと作り上げたこの音空間をお客さんと一緒に楽しむだけ。自身も3年ぶりにこの作品を観て、新たに思うことがたくさんある。子供のころ、母に連れられていった実…

【食卓には楽しみが待っている】

2018年5月15日買物に向かうときは、愛用のレトロなデザインのリュックとエコバッグを持参して出かける。カゴいっぱいにまとめ買いした品品を手際よくカバンに詰め込むも、長さのあるものは、なかなか収まりにくい。この5年半のあいだに、何度かこんな…

【無常であるがゆえにめぐりくる「今」という時】

2018年5月11日やや挙動不審になりつつあった録音データ記録用ハードディスクを新調するために、いつもの「少し遠回り」なルートで秋葉原へ向かった。それは、初心を忘れないようにするためでもある。──ところが──CBS/SONY時代から30余年見つめていたS…

【母が伝えようとしてくれている何かを】

2018年5月10日母が入居している特別養護老人ホームへの道中は、とても緑ゆたかな道のりが続く。──いつかこんな自然のなかに暮らす日がくるかもしれない──今あることがすべてではない──可能性は無限にあるのだと自らに言い聞かせながら車を走らせた。…

【ラジオのある生活】

2018年5月10日先月までお世話になっていた介護老人保健施設入所中から、母はそれまでずっと聴いていたラジオを聴かなくなった。自宅にいたころは、寝入るときには必ずラジオをそばにおいていた。ときには深夜番組も聴いていたらしい。「岡村くんのオ…

【咀嚼欲を満たすサラダ】

2018年5月9日 8:30AM──昼夜逆転仕事人の使命を果たして、朝食を。下敷きになったキャベツの千切りがまったくみえない、山盛りサラダと白湯。食後にコーヒーを淹れたいところだが、安眠の妨げになるゆえ、パス。風呂に入って溢れ出したドーパミンの活動…

【母の献立にはなかった品品】

2018年5月8日 白菜のサラダ──。 #主夫ロマンティック #介護 #介護者 #在宅介護 #介護独身 #シーズン6 #kawaseromantic #介護者卒業 #母 #老人保健施設 #特養 #入居中 #ケアマネ #ケアマネージャー #川瀬浩介 #元介護者 #男の料理 #料理男子 #料理中年 …

【希望に満ちた場所へ】

2018年5月3日森山開次《サーカス》──。まもなく開幕する3年ぶりの再演のための稽古が進んでいる。通し稽古を2度拝見して、2度とも涙が溢れてきた。──どんな記憶を参照しているわけでもない──大切だった過去の出来事を思い返すことなど、稽古中は一切感…

【母への償いのために】

2018年5月1日コーヒー生活を始めたのは、2016年初頭からだった。母との暮らしに息が詰まってしまい、何か気を紛らせるものを、と、コーヒーを選んだのは、必然だったのかもしれない。──香りを聞く──最初は香を嗜むように、その匂いだけ嗅いで飲ま…

【永遠の棲家──魂の源泉】

2018年4月30日夕暮れ時、外出から戻り、水泳に向かう前にコーヒーを淹れていた。少しでも運動効率を高めて脂肪の燃焼を促進するために。するとそのとき突然に、言葉が舞い降りて来た。──魂の器──老いていく母のことを想っていた。生きるとは、この身…

【初心を思い返す日】

2018年4月30日Spiral Independent Creators Festival──。長い名前だ。2000年開催の第1回から参加したことを思うと、今もまだこうしていられることが不思議でならない。──2002年──第3回SICFグランプリ受賞。あの日、青山通りの確かこのあたりから、母…

【不滅の主夫ロマンティック】

2018年4月29日目指す丁寧な暮らしには、やはり「満たされた食」が欠かせない。何の疑問を抱かせることなく、我が家には、楽しい食卓が常にあった。それを守り通してくれた母への感謝の想いは、ぼくが持ち得る語彙を総て使っても、とても言い表せない…

【そう信じている】

2018年4月29日大型連休に入った。みんなどこかへ出かけてしまったのだろうか?それとも、今のぼくのこころの中がそうありたいとしているのか?──とても静かだ──母のこと。仕事のこと。そして自分の身体のことが一度に重なってきたこの一ト月──それぞ…

【言葉から解き放たれて】

2018年4月28日今日も太陽を見ていた。雲ひとつない快晴のもと、昨日と同じように、空は白く輝いていた。天高く煌めく太陽──。バックミラー越しの夕陽──。その夕陽が照らしていたのは──真昼の月。また満月が近づいている。特別養護老人ホームに入居し…

【白く輝く】

2018年4月27日このところ、眠りが浅くなっているのか、夢をよくみる。先日は、大きなトカゲと一緒に暮らす夢を。今日は、まるで大海を旅するくじらのようにゆったりとした優雅さで気泡が煌めくプールのなかを潜りながら泳いでいる夢だった。いずれも…

【元介護者になった日】

2018年4月27日今日の午後、予定通り、一切の滞りなく、母を特別養護老人ホームに入居させた。これで、ぼくの介護者としての日々は終わった。よほどの事情がない限り、母が自宅に戻ることはないだろうし、今後長期に渡ってぼくが介助する理由もない。…

【3年物語──訳などあるはずもない】

2018年4月27日森山開次《サーカス》──新国立劇場での再演が近づいている。昨日、3月の顔合わせのとき以来、初めて稽古場に足を運んだ。初演から実に3年ぶりに作品を観て、思った。──こんな凄いことに参加させてもらっているんだ──3年という月日の間…