主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと

介護

【明日のことは誰も知らない】

2017年11月20日 今夜は、細めの弦を張ったギターと戯れる──。 昨夜の練習では太めの弦を張ったギターを使った。僅かな違いでも弦全体のテンションは変わってくるから、やはり細いと押さえる力が少なくて済むので手には優しい。 最近よく聴いているア…

【前を向くために】

2017年11月17日 「どうするんだっけな?」 もうながい間、窓を磨く気持ちの余裕さえなかった。あらゆることに追い詰められ、ときにそれから逃れることばかりに注力しては、気づくと身近なことから疎かになっていた。 ──ガラスみがきとワイパーを買っ…

【母へ音楽の贈りもの】

2017年11月15日 ゆっくりとゆるやかに子供がえりをしている今の母に、何か退屈しのぎはないだろうか? 本はあまり読まないからいつも新聞ばかり届けていたけれど、 「そうだ!音楽はどうだろう?」 と今ごろ気がついて訊ねてみた 「譜面はまだ読める…

【安心の食卓】

2017年11月12日 Back to the Basic──。 母の不調が契機となり主夫ロマンティックと化して丸5年。ほとんどの家事をなかなかのハイレベルでこなしてきたゆえか、主夫的バーンアウトを味わっているこの頃、特に料理への探究心…いや意欲がなくなってきて…

【居心地のいい孤独】

2017年11月11日 ベルリンから戻ってちょうど1年ほど経った──。 わずか10日間の滞在だったけれど、あの街の肌触りはとてもよく憶えている。東京に帰ってきてから、どこかの街角でそれと似た感触を想い出すことがある。今日も母との面会に向かう道す…

【この森を抜けて──介護の日】

2017年11月11日 今日は歩いて面会に行くことにした。 先日、母が入所している施設の隣にある病院まで健康診断を受けに歩いていったのと同じ道順だ。片道30分ほどかかる見込みだったけれど、歩くテンポもよかったのか、予想よりハイペースで近づいて…

【現存するレトロ──時間という荒波を超えて】

2017年11月11日 果たして、このオーブンはいつから家にいるのだろう? ビルトイン式はもちろん、電子レンジやオーブンレンジさえ存在しなかった遥か昔から我が家を見つめ続けてきたこのオレンジ色の電熱式オーブンを、今朝、壊してしまった。 母は、…

【夢に出るほど縁遠い──再び】

2017年11月10日 母が歩く背中を見つめている。 その速度になかなか追いつけない。 自転車も乗りこなしている。 買い物だってひとりで行ける。 ──これならまた家に戻って来られる── 育った街の街角を一緒に歩きながらそう思い浮かべた矢先、ぼくは空…

【或る定めを生きる】

2017年11月4日 Ryuichi Sakamoto: CODA──。 映画を公開初日に、しかも舞台挨拶までも見届けた経験は、今日が初めてだった。 ──CODA── タイトルが物語る通りの内容だと感じた。 かれこれ振り返れば三十余年、リアルタイムに追い続けたぼくにとっては特…

【初めにいた場所に戻るその日まで】

2017年10月30日 〆切に追われていたことを理由にして、母の面会からまた遠のいていた。 「そろそろ着替えがなくなるころ」 そう案じていた昨日の午後、施設から連絡が入った。 受けると、洗濯物の催促ではなく、リハビリ中の事故の報告だった。事故…

【回想の森】

2017年11月30日 秋晴れの朝、森の小道を抜けて健康診断のため病院へ向かった。 母の事故以来、丸5年通い続けている病院は、当時の面影も少なくなり、すっかり生まれ変わっている。今年は遂に健康診断の仕組みも改善され、計測〜採血〜問診〜心電図ま…

【オモイダセナイ】

2017年10月26日 午前4時、台所で立ったまま夜食をとる。 〆切間ぎわというだけの理由ではなさそうなくらい、このところ、暴食してしまっている。 「これは昼、こっちは夜に、で、これが翌朝に」 自分で作った食事が美味しく感じられないこのごろ、1…

【主夫ロマンティック、シーズン6】

2017月10月20日 母の留守が続いてすっかり使われなくなった付箋が目に付いた。通院やリハビリの予定など、母のメモ代りに活用していたものだ。 ──10月15日── 気忙しくて忘れていたけれど、あれから丸5年が過ぎていた。今になって振り返れば、あの日…

【その気持ちに憶えがある】

2017年10月18日 言葉では言い表せそうにない感情があふれそうになっている。 またしばらく時間をおいて母の面会に行った。そんなに時間は経っていないはずなのに、痩せて元気のなさそうな母の表情をみて、胸が痛んだ。 話し相手には困らない。献身的…

【好きにさせてあげればよかった】

2017年10月5日 今夜、家中の注意書きをすべて剥がした。 仮に母がここへ戻って来られたとしても、もはやこれらは役目を果たさない。 改めて見返すと、異様にも思える。けれど、敗血症を繰り返したり、歯が次々と折れてしまったり…そうした出来事が続…

【その営みを何と呼ぶのか?】

2017年10月5日 母の面会に行った帰り道、秋らしいうろこ雲の向こうに浮かんだ満月をひとり見上げる。 ──七色の光を雲に映す── あの光が「月」だと知り得なかったころ、人の想像力はもっと豊かだったかもしれない。科学は自然の神秘を解き明かそうとし…

【予防接種の季節】

2017年10月5日 今年もこの季節の到来。母に代わって問診票を記入し、施設へ提出する。 ぼくも来月には受けておきたい。 出張前夜の今宵、面会に行ってこよう。 #主夫ロマンティック #介護 #介護者 #在宅介護 #介護独身 #シーズン5 #kawaseromantic #…

【気持ちのラベル】

2017年10月2日 96点──。 単純な足し算かと思いきや、正解は予め記されていて、「いくつ足したら数式が成り立つか?」という内容だった。 何問あるのかと数えていたら 「裏もあるんやで」 と答案用紙をペロんと裏返してみせた母。 なんと100問もあって…

【珠洲の栗】

2017年10月2日 15:00──。 目覚ましをセットしなくてもいい、そんな久しぶりの朝のはずだったが、目覚めると、時刻はすっかり夕暮れに差しかかろうとしていた。 未だ疲れの抜けないままの身体で台所に上がると、珠洲の地元の方からいただいた栗がある…

【母がそこに棲まう画】

2017年9月24日 敬老の日に撮影されたと思しき写真が母の居室にあった。 ぼくが旅に出ている間の様子であろう。こうして画像でみるとなおさら細くなったことがよくわかる。 それでも相変わらず、和かな表情だ。願わくは、自分も絶えずこうありたい。 …

【今にもぐっすり眠りたかった】

2017年9月24日 9:24──朝、二泊三日の一時帰宅を終える母にオムレツを作った。ぼく自身、日常的に食べなくなったからケチャップの買い置きはない。 添えたほうれん草に加えて野菜炒めも少しだけ差し出してみたけれど、またさらに咀嚼力が衰えたのか、…

【在宅介護を終えるとき】

2017年9月23日 24:17──。 母の洗濯物を洗って、1日の終わりをようやく迎えた。 今夜は深夜まで放送されていた演芸番組を母が見入っていたこともあって、だいぶながく時間を一緒に過ごした。夕方、母は静かにテレビを楽しんでくれていたので、夕飯の…

【さもそれこそが正義かのように】

2017年9月23日 10:00──。 ながいながい1日が始まって既に4時間が過ぎた。 早朝からいろんな音楽の映像をみせるもすぐに飽きて 「次はこれ観たい」 「もうこれ飽きた」 という問答を繰り返す──。 ようやく今になって母の朝食を支度したが、ぼくはちょ…

【ぼくらは言葉に頼りすぎた】

2017年9月22日 23:30──母を寝かしつけたあと、台所を綺麗にして、ようやく一時帰宅1日目を終える。 20:00──夕食を終えてからもアバドの演奏に母が興じているうちに、傍でせっせと作り置きを始めた。 ──鶏胸肉の蒸し鶏・鶏肝と砂肝の生姜煮・鯖の味噌…

【音楽の力を信じて】

2017年9月22日 母、帰宅──。 今回の一時帰宅中は、クラウディオ・アバド指揮の演奏会やオペラの映像を集中的にみせることにした。 音楽の力は凄まじく、日常的に会話が滞りがちでも、心に刻んだ旋律には今も呼応できる。 母が歌い出したら、まだまだ…

【母、一時帰宅前──人感センサー、設定確認】

2017年9月22日 母の一時帰宅を前に、各種配置したセンサーの再確認を。 前回の帰宅時に悩まされた居間の椅子から立ち上がりを知らせるために、新たに一基を追加して配置してみたが…どう設置しても、必要以上に鳴り響きそうな予感。 それでも、鳴らな…

【すべてを変えてしまうには「一瞬」で事足りる】

2017年9月19日 《WONDER WATER》3本の上演を終えてその夜に帰京し一夜明けた今日、早速、次回の珠洲でのパフォーマンスの打合せのため都心部まででた。 帰り道に少し寄り道したのは、六本木 ──あのARK NOVAが東京にやってきた── 2011年8月、東北の震…

【母こそ、今を生きている】

2017年9月14日 旅の前に、今夜も母の面会にいった──。 先日、施設のスタッフの方から伺った 「タヌキの置物がいつ喋り出すのか?」 という話題を出してみたけれど、母はそんな話しを自分がしたことさえ憶えていないらしい。 無論、それはどうでもいい…

【タヌキはいつか話しだす】

2017年9月12日 今夜も面会時間終了間際に施設に到着した。 今後の方針が決まってからは、母に事情を説明することもなくなったので、話題に困ることが多くなった。最近の面会は、洗濯物を届けにいって様子を聞いて、目にした記事や日頃体験したことを…

【幸福と幸運】

2017年9月12日 毎日眺めている西向きの台所に立ってコーヒーを淹れながら、すりガラス越しに射し込んでくる西陽をぼんやり見つめる。 ──ぼくの1日の始まり── こうした隙間の時間、このところ「幸福」について想いを巡らせている。 この一年ほど、ま…