主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと。そして、それからのこと。

主夫ロマンティックのひとりごと

【これからゆく道】

2020年5月3日「まっすぐ歩けるはずはない」山あり谷あり、さらに落とし穴あり──真当な教育も受けず、確かな後ろ盾もないまま、音楽、そして美術の道に進む選択をしたぼくが歩んできたのは、そんな道だ。──あれから30年も経つのか──もしかしたら、道さ…

【この恐れは何かに似ている】

2020年5月1日令和元日から1年が経った。こんな日常がやってくると予想さえできていなかったのは、日々の暮らしに追われていたせい──その事実を反省しながらも、計り知れない恐れに押しつぶされそうな今、改めて自らに言い聞かせている。「この危機に…

【世界一平和で安心安全な場所 ──Jくんとラザニア】

2020年4月10日あれは確か、小学三年生か四年生のころだった。ある放課後、仲良くしていたJくんのお母様に声をかけられた。「ラザニア食べに行きましょうよ」ラザニア・・・聴いたことのない響きだった。当時は昭和50年代半ば。今のように「イタリアン…

【我が愛器からの忠告】

2020年3月27日3月21日──その日の夜は意気揚々としていた。厳戒態勢のなか行われたあるリハーサルは順調に進み、ようやく音楽の全体像が見え始めていたからだ。帰宅後、予定どおりアサリのパスタを作り満足な夕食をいただくことができたのも、気分が高…

【自然から学ぶ──再び】

2020年3月26日案の定、混乱時にかならず起きる「いつかみた様相」を呈してきている。──他者の言動を批判する──人が会うことを制限されているにも関わらずそれが目につくというのは、まさしく現代の象徴である。今こそひとつになるときだというのに…。…

【今日という名の贈りものを再び】

2020年3月25日「この危機を乗り越えて生き延びることができたら何をしようか?」風水的には全く勧められないらしい西陽の射す台所でコーヒーを淹れるなどしてひと息つきながら、近ごろ、よくそんなことを思い浮かべる。ここはぼくのお気に入りの場所…

【チーズケーキを頬張り「いまこのとき」を想う】

2020年3月8日この冬は、ずっと調子を崩したままだ。昨晩秋の出張中、突如襲われた呼吸困難──主治医によれば、肺の音を聴く限り肺炎や喘息ではないという。逆流性食道炎による食道への胃酸上昇で刺激され気管支炎を起こした・・・と考えられるとのこと…

【母の予言】

2020年2月5日「人生やり残しなし」被介護者になってから、母は幾度となくこの言葉を口にしていた。月に一度行われる介護サービス担当者会議では、今月の目標を訊ねるケアマネージャーにいつもこう言い放っていた。「やりたいことはぜんぶやった」ぼく…

【介護者生活7年を過ぎて──令和元年大晦日】

2019年12月31日2019年を終えようとしている。2016年から2019年初頭まで費やした「我が改革」の成果を見届けようとした今年──新しい門出を迎えるに相応しく、元号も新たになった。この1年、主に取り組んでいたのは、まず何より、全力で…

【母の裁縫箱に詰まったもの】

2019年4月3日ながらく続いた介護者としての日々のなかで、ひとつだけ決めていたことがある。──裁縫だけはやらない──もう昔のことすぎてその理由はあまり思い出せないが、あらゆることをこなし過ぎていたせいもあり、時間がかかる作業はしたくないと思…

【涙のスイッチ(2)】

2019年4月2日ぼくの誕生と入れ替わるように父が先立ち、母は兄とぼくを連れて東京に移住することを決めた。その準備におそらく3年ほど費やしていたはずだ。ぼくがちょうど幼稚園にあがる年、我が家の東京での暮らしが始まった。移住計画が実行された頃…

【涙のスイッチ(1)】

2019年4月1日ある日曜日の夜、出張帰りの東京駅での出来事──。それは、品川駅を過ぎたときだった。大半の乗客が降車し、車両内が急に静まり返った。そしてぼくは突然に、嗚咽した。夕暮れ──無事に現場を終え、機材をパッキングして休んでいると、歩く…

【そのときのための支度】

【解放】2018年3月29日早朝、いつもの窓辺から、朝陽を背に染まる満開の桜を眺める。 川瀬 浩介 - 【そのときのための支度】  2019年3月29日  1年前の今日──。 ... | Facebook 2019年3月29日1年前の今日──。我が家から拝めるお…

【見返り天使】

2019年3月9日某所にて、絶品の甘いものを頬張る満たされた時間を過ごしていると、なんだか絶えず視線を感じる気がした。いただき終えて目線を落とす。するとそこに、視線の主がおられた。──見返り天使──このふわふわでぷりぷりな佇まい…誰かに似ている…

【Survive──鉄鍋で味わう野菜くず】

2019年3月7日最近、改めて、鉄鍋で調理したときの旨さに感心させられている。きっかけは、南部鉄器。アヒージョを作ろうとして、ココットのような手のひら大の鍋を手に入れたこと。油を馴染ませるシーズニングのために、いつもどうにか味わいたいと思…

【愛という名の音楽】

2019年3月5日母と亡き父の結婚記念日──。今日、施設にいる母に会いに行かないと決めたいくつかの理由のひとつは、これだ。そして奇しくもこの日、「愛」を表象するための音楽が完成した。母に何かをしてあげることよりも大切なことがぼくにはあった。─…

【時機 ── 一ト月ぶりの面会と親子インタビュー(2)】

2019年2月18日テーブルの上には置く場所はない──壁に穴を開けることはできない──つっぱり棒などで取り付けるのは大げさ過ぎる──安全性も考慮しなければならない──しばらく思案するも、持ち前のアイデア力がぼくに妙案を授けてくれた。──望むと必要な…

【時機 ── 一ト月ぶりの面会と親子インタビュー(1)】

2019年2月18日この6年の間、こんなにも母と顔を合わせなかった日々はなかった。この一ト月、面会が中止されていた。施設内でインフルエンザが発症したそうで、落ち着くまでの間、一切の入館を禁じられた。その連絡が届いたのは、母の誕生日から数日経…

【自然のリズムに乗って──もう一度、ひとり御膳を】

2019年1月27日関東でも積雪があると予報された今日、我が家のある街は幸いにも晴天のままで一安心。昼間の陽射しがあるうちは暖かさえ感じられた。昨夜は創作で脳が湧いたのか、0時前に作業を切り上げるも、明け方まで寝付けなかった。最近は早起きを…

【快気を期して──ひとり御膳】

2019年1月26日ようやく咳も落ち着いてきた。夜、寝ているときにも咳き込むことが多かったけれど、ここ数日、積極的に紅茶を飲んでいることに加えて、処方された漢方薬の効果も現れてきたのだろうか? 怠さも感じなくなってきた。すると復活するのが食…

【僕は幸福に抱かれている】

2019年1月23日インフルエンザではないという診断を受けたが、先週末に見舞われた風邪をこじらせている。昨日からひどい咳が始まったかと思えば、今日は吐気…。──僕は幸福に抱かれている──布団に入って横になったら少し落ち着いてきたような、しないよ…

【母の誕生日とパンと婚姻届】

2019年1月17日今日もまたこの日を無事に迎えられた幸運を噛み締めていた。今日は、母の86歳の誕生日──周りはそのことを伝えようとするも、本人はそのことを思い出せなかった。まるでそれは、生まれたばかりの赤子が、その瞬間が自分の誕生のときであ…

【時代の潮流に逆行する日々】

2019年1月9日「最高のパフォーマンスには睡眠が大切」「非効率なマルチタスクはやめてシングルタスクに」「朝の時間が人生を変える」今どき、世の中はこんなメッセージに溢れている。48歳を迎えたばかりのぼく自身の体験として、このいずれの提案も共…

【餅の代わりに正月パン】

2019年1月5日丸い──。それだけで素晴らしい。年末、うっかり間違えて、薄力粉を買ってしまった。薄力粉100%で食パンが作れるかと挑んだ元旦だったが、型から取り出すときに完全崩壊…見事に失敗に終わった。使うあてのない薄力粉…。ホットケーキを作る…

【静けさのなかへ──2019年初夕陽】

2019年1月1日元旦を迎えた──。前日約束した通り、今日も母に会いに行った。到着時刻は、昨日よりも40分ほど遅れた午後5時丁度。母の居室から臨む空はまたしても、見事な色気を放っていた。「今日はなんだかよく笑うね」「あんたの顔が面白い(笑)」「…

【独りで迎える初めての元旦の朝】

2019年1月1日午前6時40分──新年を迎えた歓喜に酔いしれた街は、まだ寝静まっている。昨夜のぼくは今朝のこの時を待ち侘びながら、早々に床に就いた。こんな風にして、元旦の朝を独りこの家で迎えるのは初めてのことだった。そして、ここから初日の出を…

【主夫ロマンティック初仕事2019】

2019年1月1日大晦日の夕方から自宅にこもって、せっせと新年のための作り置きを行なっていた──母に最初に教えてもらった2品を含めて4品が完成。・鶏肉と野菜のトマト煮・茄子の中華風肉味噌炒めぼくが主夫ロマンティックに初めて変身した日、母に手ほ…

【介護者が口をつぐむわけ──夕陽を見つめて】

2018年12月31日夕刻、日が落ちる前に母を預けている施設に着いた。──母の居室からみた平成最後の夕陽──あまりの光景に、言葉が見当たらなかった。この秋、夏場から5週間の入院生活を経てこの特別養護老人ホームに戻った時、母の部屋が東側からこの西…

【生まれ変わる──6年分の大掃除を終えて】

2018年12月31日2012年10月15日、午前11時30分ごろのことだった。相変わらずの昼夜逆転状態でその時間まで眠っていたぼくは、聴いたことのない巨大な物音で目が覚めた。同時に、音を扱う身として、その音が何を物語っているのか、瞬時に察知した。覚…

【胡麻と胡桃のイギリスパン】

2018年12月24日今日も早朝から起き出して、活動開始。クリスマスにパンを焼きながら大掃除の続きを実行したいと、数日前から考えていたのだ。朝のルーティンを終えたあと、温めた豆乳で割ったエスプレッソを飲み干して、早速パン作りに入った。材料…