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主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと

【こころを写す鏡】

https://www.instagram.com/p/BTW9tojDpOB/

2017年4月26日

 

人は互いを写す鏡──。

 

今の母は、見事にぼくのこころを写し出す

 

施設の空きを待ちながら続く入院も、いよいよ期限が迫ってきた。例外として延長もあるのか? と想像してはみたけれど、やはり制度は皆に等しく適用される。

 

5月中旬までは希望する施設の空きがないらしい。退院からそこへ移るまでの間は、これまで通り、ショートステイを頼る他ない。病院の相談係からケアマネジャーへ連絡を入れてもらい、調整をお願いした。幸いにも、慣れたショートステイに空きがあるらしく、希望している老人保健施設に移るまで受け入れてくださるという。

 

ただ、そこではリハビリは行われない。完全個室でトイレも室内にあるため、これまでと体力の異なる母が無理をしてしまう可能性もある。そして母の性格上、食事以外はほとんどベッドに横になってしまうだろう──。

 

ぼくの手を離れる以上、それはもうどうしようもないこと──考えないことにする。

 

今夜の見舞いの際、母にそのことを伝えた。

 

「来週、退院できるって」

 

そう浮れる母に本当のこと説明するのが、こんなにも苦しいだなんて…。

 

珍しく神妙な面持ちで、目線を逸らすこともなくうなづく母の顔を見ていると、そこから即座に逃げ出したい気持ちになった。

 

じっと見つめる母の表情から、ぼくはこころのなかでその無言のメッセージを創造してしまった。疑心暗鬼を生ずとはまさにこのことだろう

 

──育んできた創造力が暴走する──

 

結局、今夜は何度伝えても憶えてはもらえなかった

 

「来週、退院できるって」

 

そう何度も何度も繰り返す母の顔は、まるで幼な子のようだった。

 

2年前、仕事の都合で、嫌がる母を初めてショートステイに預けた日の痛みが今日、蘇ってきた。

 

まだ少し肌寒い日の朝、車に乗せようと母の手を引いた

 

「大きくて暖かい手や」

 

そう耳にしたときの張り裂けそうな想いを忘れないように…そう誓ったはずなのに。どこかで、ひとりこの静かな暮らしに酔っていた──

 

あの日を迎えないための準備が間に合わなかった。そして今も、何も変えられないままでいる

 

──結果がすべて──

 

無念。

 

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【さよなら炊飯器】

https://www.instagram.com/p/BTWqiDNj9yF/

2017年4月26日

 

ぼくが台所を引き継いでから使わなくなった炊飯器。知人のもとへ旅立つ予定が浮上したので、動作確認をした。

 

できる限り汚れを落とし綺麗に身支度をして、スイッチON。炊飯器で米を炊いたのは、実に4年半振りだった。

 

つけ置き時間を考慮してタイマーをセットしさえすれば勝手に炊き上がるのは確かに便利だけれど、仕上がりは…土鍋で炊いた方が旨いと感じるのは、慣れか気のせいに違いない。

 

いずれにせよ、これ、25年前の機種だから、最新型には及ぶはずもないのだけれど──。

 

炊飯器を使わなくなった理由は単純

 

──いつか壊れるから──

 

最近では米を炊く以外の調理にも使うらしいが、原則、炊飯が主たる目的で毎日使わない我が家にとっては場所もとるし買換えには相応なコストがかかり、いいところが全くない。

 

ちなみに、最初に丁寧に処理をして、いきなり強火にかけないなど大切に使い続けている愛用の土鍋は、未だ現役。あらゆる調理に大活躍で、いまもヒビひとつ入っていない。

 

モノを愛しむ心を育んだつもりはないが、野球少年だったころから道具の手入れは好きだったし(それだけでプレイが上手くなる幻想を抱ける)、その後の思春期から現在に至るまでの楽器や青年期からのコンピュータも、できるかぎり自分で面倒をみている

 

──これを愛着、というのだろうか?──

 

必需品が増えていき、どれひとつ欠けても日々が成り立たないと自覚するようになったのは、楽器を手にしたころからだったかもしれない。

 

モノの扱いがあまりに自分とかけ離れている人とは、心の距離も自ずと…。

 

──求められる場所で──

 

それは、モノに限ったことではないことだ、と、ながらくぼくの腹を満たしてくれた炊飯器に礼を伝えながら思った夜だった。

 

 

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【昭和レトロなガラス食器】

https://www.instagram.com/p/BTVyJ9wDEdw/

2017年4月25日

 

昭和の名残り──。

 

昨日からようやく着手した、母の食器コレクションの整理。

 

新宿の家からここに越して来るときに梱包されたままだった段ボール箱の山を初めて開けたのは、たしか3年前のこと。あまりの数に慄き、そのまま押入れの一番深いところへ押し込んだ記憶がある。

 

テーブルセットで買うものだから5脚揃っている場合が多く、とにかくかさ張る。それにしても、母ひとりでよくここまできちんと梱包したものだ。割れた食器はひとつもなかった。

 

昨夜、作業を中断して見舞いに行った歳、冗談混じりに状況を話した──

 

「晩餐会でもするつもりだったのか?」

 

東京に移ってくるときにほとんど処分したといっていたから、当時はどれだけの数だったのかと思うと気が遠くなる。

 

残されたものの大半は京都で暮らしていた時代のものだが、70年代も終るころ、〈インベーダー〉や〈パックマン〉といったテーブルゲーム全盛期に、東京の京橋駅近くで2年ほど「モーム」という名の喫茶店(サマセット・モームが名の由来)をやっていたこともあって、そのときに使われていたと思しき食器もだいぶ残っていた。

 

それらを合わせると…全部並べたら、きっと壮観な景色になることだろう──。

 

去年、横浜にスタジオレジデンスしていたとき、見学に連れ出した帰りに母を京橋まで連れて行った。車で通りがかっただけだったこともあってか、場所のことはあまり思い出せないようだった。

 

喫茶店として借りていた場所を解約する日、ビルのオーナーへの挨拶の席に、小学4年生だったぼくもなぜか同席していた。

 

品格のない薄情な笑顔を浮かべる先方から皮肉を言われたことだけ、なぜか今でもよく憶えている。

 

大人の嫌なところを感じた、これが最初の記憶かもしれない。

 

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【包丁1本40年】

https://www.instagram.com/p/BTS8HetDkc_/

2017年4月25日

 

料理を終えて、切れ味の衰えた包丁を研ぐ──。

 

親指の爪の上で滑らせ刃のばりを取り除いたことを確認してからバナナを切り落としてみると、実にいい切れ味。断面も美しく、舌のうでの感触も全く違う素晴らしさを体感したが、やや切れすぎな印象ゆえ、わずかに鈍角に調整しなおす。

 

それにしてもこの包丁、もしかしたら、母の京都時代から使われていたのだろうか? 新宿時代からはこの包丁だったことは覚えているから、少なくとも40年モノであることは間違いない。

 

母の物持ちの良さは、昭和一桁生まれゆえという理由だけではなさそうな気がする。

 

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【自分のためなら料理は作らん】

https://www.instagram.com/p/BTS6X56DVd8/

2017年4月25日

 

このところ睡眠時間は少ないのに、目覚めが実に快調だ。

 

眠りの浅い周期にタイミング良く起きるからに違いない。ながらく活用している睡眠の質をモニタリングするアプリの集計データがそれを物語っている。

 

せっかく早起きしたから、まだ街も静まり返っている間に主夫ロマンティックに変身。快晴を期して布団を早々と干したあとは、料理を。

 

スパイスを油で炒めるところから始まるレッドカレー、鶏ガラスープの湧いた土鍋に放り込み蓋をして置くだけで出来上がる蒸し鶏、塩を擦り込んで1時間強じっくり煮込む塩豚角煮、そして、母から教わった、ひじき…。

 

こんなに時間をかけるつもりはなかったのだけれど、気づくと後片付けまで終わったところでほとんど4時間を費やしていた。

 

それでも不思議と疲れはない。でも、差し出す相手もいないのに作るのは何とも虚しい気分だ。

 

「自分のためなら料理は作らん」

 

そんな母の言葉を、今日もまた、独り思い出していた。

 

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【忘却を誘う快晴】

https://www.instagram.com/p/BTNj48iDtFm/

2017年4月24日

 

大切なことをぜんぶ忘れてしまいそうな快晴に包まれた東京──。

 

こんなに爽快な1日の始まりは…

あまり記憶にないかもしれない。

 

#快晴 #sky #東京 #tokyo #bluesky #feelgood #爽快

 

【福音】

https://www.instagram.com/p/BTJlzqDjcYi/

2017年4月21日

 

今夜も母の見舞いへ。

 

夕食後の時間に病室へ入ると、母はもうすっかり寝入っていた。テーブルの上にいつも置かれているリハビリ科からの予定メモを覗くと、今日は朝から午後にかけて、短い時間に3回のリハビリがあったらしい。きっと疲れているのだろうとは思ったが、そっと声をかけてみた。

 

「ああ、あんたが来てくれると、うれしい」(関西弁)

 

母はいつも、ぼくの顔を見るなりそう口にする。

 

寝入りの頃に起こされたこともあってか、今日はあまり話も弾まない。わずかな沈黙のあと、母が思い出したかのように口を開いた。

 

「ながいこと生きてきて、これは成功やったなぁと思うことがある」

 

──何かと思ってそっと耳を傾ける──

 

「それはあんたを産んだことや」

 

この、物語のようなシーンは、一体、何だ?

 

そんな冷静な分析は一瞬にして感情の波にのまれた。嗚咽を堪えるのが精一杯だった。

 

こんな気ままな日々を過ごしていられるのは、母のおかげだ。同時に、世間の親御さんが喜ぶこと──いい学校を出ていい会社に勤めて立派な社会人として家庭を持つ──を一足先に果たしてくれた兄の努力によるものだ。今、母がこうして何の不安もなく入院が続けられているのも、兄がいてくれるおかげ──。

 

ぼくはきっと、毎日何かをした手応えが欲しくて、こうして母を見舞っているだけなのかもしれない。多忙な兄の、またはぼくと入れ替わるように先立った父の代わりに、ぼくにできることをしている…。

 

これは、誰からもとがめられることにない、都合のいい言い訳なのだろうか?──。

 

帰り道、ずっとそんなことを考えていた。

 

そして、突然そんなことを言い出す母のことが少し心配になった。でも、確かにその言葉を受け取ったから、安心しておくれ。

 

この母のもとに生を授けられた幸運を、きちんと言葉にして伝えたい。

手遅れにならないうちに。

 

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