主夫ロマンティック

独身中年男子の介護録──母が授けてくれたこと

【その気持ちに憶えがある】

https://www.instagram.com/p/BaYsFRzDY0k/

2017年10月18日

 

言葉では言い表せそうにない感情があふれそうになっている。

 

またしばらく時間をおいて母の面会に行った。そんなに時間は経っていないはずなのに、痩せて元気のなさそうな母の表情をみて、胸が痛んだ。

 

話し相手には困らない。献身的にお世話をしてくださるスタッフの皆さんもいる。それでも、やはりぼくの代わりはいない。

 

 

──この、気持ち──

 

 

知り得るあらゆる言葉を思い浮かべてみても、どれもこの気分にはフィットしそうにない。今、言葉で気持ちにラベリングできれば、少しは楽になれるはずなのに…。

 

言語が誕生する以前、人類はこんな気持ちをどう処理していたのか?

 

理屈が感情を越えることなどないと信じるぼくは、「こうありべき」と、思考により植えつけられた公的抑圧からは距離を保ってきた。

 

気持ちのゆらぎを否定するのではなく、今、自分のなかに棲むこの感情をみつめ受け止める時間を大切にしたい。

 

心なしか、今日の母は、少し目を潤ませているように見えた。ちょうど都合良く目薬を差す時間になったから、本当のところはよくわからなかったけれど。

 

 

──今日もまた、あの記憶が蘇ってきた──

 

 

子供のころ叔母に預けられて母の帰宅を待ち侘びていたときのこと。

 

気持ちを表現するのに十分な言葉を持ち合わせているはずもなかったころ、きっと、いま施設で過ごす母がよくわからないままに感じている気持ちと似たものを、幼かったぼくも感じていたに違いない。

 

「その気持ちがわかる」

 

とは言わないようにしている

 

 

「その気持ちに憶えがある」

 

 

こうした言葉の肌触りの差を、どうか母にも感じ取ってもらえたらと願う。

 

 

季節の移り変わり目を知らせるように、施設内には、ハロウィンの飾り付けがあった。フエルトでできたそれは、近づいてみると予想外によくできていて、なかなか気が利いている印象がした。

 

もう、あっという間に師走を迎えるのだろう。一瞬一瞬を、今まで以上に大切にしたい。

 

 

取り返しのつかない後悔をしてしまわないように。

 

 

#主夫ロマンティック #介護 #介護者 #在宅介護 #介護独身 #シーズン5 #kawaseromantic #介護者卒業間近 #母 #老人保健施設 #入所中 #特養 #入所準備 #ハロウィン #衣替え

【好きにさせてあげればよかった】

https://www.instagram.com/p/BZ3m0ncjwPB/

2017年10月5日

 

今夜、家中の注意書きをすべて剥がした。

 

仮に母がここへ戻って来られたとしても、もはやこれらは役目を果たさない。

 

改めて見返すと、異様にも思える。けれど、敗血症を繰り返したり、歯が次々と折れてしまったり…そうした出来事が続いたから、とにかく必死だった。

 

でも、今思えば、それは母のためというより、自分の想いを届けたいという、至極一方的な気持ちだったことがよくわかる。

 

母とぼく、2人きりの毎日は、ときに息詰まり不安に怯えることも数えきれないほどあった。それを、こうして目に見える形で想いを表すことで、自らを解き放とうとしていたに違いない。

 

親が子を叱る

恋人同士が気持ちをぶつけ合う

子が親の注意を引きたくて言うことを聞かなくなくなる

 

 

──ぜんぶ同じこと──

 

 

もっと好きにさせてあげられなかったのか?

 

それが叶えてあげられるすべての余裕が、ぼくにはなかった。

 

 

#主夫ロマンティック #介護 #介護者 #在宅介護 #介護独身 #シーズン5 #kawaseromantic #介護者卒業間近 #母 #老人保健施設 #入所中 #特養 #入所準備 #テプラ #ポストイット #注意書き #撤去

【その営みを何と呼ぶのか?】

https://www.instagram.com/p/BZ3SEMlDclD/

2017年10月5日

 

母の面会に行った帰り道、秋らしいうろこ雲の向こうに浮かんだ満月をひとり見上げる。

 

 

──七色の光を雲に映す──

 

 

あの光が「月」だと知り得なかったころ、人の想像力はもっと豊かだったかもしれない。科学は自然の神秘を解き明かそうとして、人類の叡智をカタチにしてきたけれど、それと引き換えにしたものは数知れない

 

 

「こうするほかなかった」

 

 

──この星に棲む巨大な人口を支えるためのシステム──

 

 

月は絶えず、ぼくらの営みを見つめている。

 

 

──その営みを何と呼ぶのか?──

 

 

いつか歴史を遡るとき、何者かが名づけてくれる日がまたくるだろう。

 

その様子を、この月が変わることなく見守り続けてくれているといいのだけれど。

 

 

#主夫ロマンティック #介護 #介護者 #在宅介護 #介護独身 #シーズン5 #kawaseromantic #介護者卒業間近 #母 #老人保健施設 #入所中 #特養 #入所準備 #月 #満月 #moon #fullmoon #tokyo #中秋の名月 #autumn #fall

【気持ちのラベル】

https://www.instagram.com/p/BZvZLhhDUX1/

2017年10月2日

 

96点──。

 

単純な足し算かと思いきや、正解は予め記されていて、「いくつ足したら数式が成り立つか?」という内容だった。

 

何問あるのかと数えていたら

 

「裏もあるんやで」

 

と答案用紙をペロんと裏返してみせた母。

 

なんと100問もあって、ほとんと正解していた。

 

 

──ぼんやりしていても、未だに数字には強いんだな──

 

 

そう感じた途端に

 

「この難易度で不正解率4%というのは、もしかして平均的レベルではないだろうか?」

 

と、すぐさま想像してしまうのは、いつもの悪い質。

 

リハビリ担当者と和かな様子で問題に取り組んでいた様を眺めていると、不思議な感情が湧いてきた。

 

 

──「愛しい」──

 

 

あのときの気持ちを、ひとはそうラベリングしたのだろう。

 

 

#主夫ロマンティック #介護 #介護者 #在宅介護 #介護独身 #シーズン5 #kawaseromantic #介護者卒業間近 #母 #老人保健施設 #入所中 #特養 #入所準備 #男の料理 #料理男子 #料理中年 #作り置き #足し算 #テスト #リハビリ #作業療法 #作業療法士

【珠洲の栗】

https://www.instagram.com/p/BZvWJJtj8N-/

2017年10月2日

 

15:00──。

 

目覚ましをセットしなくてもいい、そんな久しぶりの朝のはずだったが、目覚めると、時刻はすっかり夕暮れに差しかかろうとしていた。

 

未だ疲れの抜けないままの身体で台所に上がると、珠洲の地元の方からいただいた栗があることを思い出した。

 

 

──「母につくり方を訊いてみよう」──

 

 

1週間ぶりの面会。

 

17時に施設に着くと、母は脳の機能維持のためのリハビリ中だった。先に部屋の整理をして大広間に戻るとちょうどリハビリが終わるころで、早速、栗について質問してみたが…案の定、ぼんやりとした受け応えだった。

 

それでも、まだぼくが訪ねると元気に右手をあげて

 

「やぁやぁやぁ、よぉ、来てくれたなぁ」

 

と、生まれ育った関西の言葉で応えてくれる。

 

 

──いつか関西弁さえも忘れてしまう日が来るのだろうか?──

 

 

珠洲土産の塩ようかんをひと口ずつ2人で食べながら雑談したあと、そんなことを思いながら施設を後にした。

 

いただいた栗は、珠洲でも作って下さった栗ごはんにしたい。次週も伺うから、地元の奥さま方につくり方を教わってこよう。

 

 

#奥能登国際芸術祭 #スズズカ #引間文佳 #石川 #石川県 #珠洲 #珠洲市 #能登半島 #芸術祭 #art #artfestival #artfrontgallery #ダンスパフォーマンス #performance #新体操 #rhythmicgymnastics #humanoidlady #ホワイトアスパラガス #livebone

【何も思い出せない】

https://www.instagram.com/p/BZjzQRqlLR7/

2017年9月28日

 

今朝の冷たい雨は、どういうわけか、何だか感傷的だ。

 

 

──無意識にどんな記憶を参照している?──

 

 

何も思い出せない。

 

 

#主夫ロマンティック #介護 #介護者 #在宅介護 #介護独身 #シーズン5 #kawaseromantic #介護者卒業間近 #母 #老人保健施設 #入所中 #特養 #入所準備 #雨 #秋雨 #rain #autumnrain

【母がそこに棲まう画】

https://www.instagram.com/p/BZbSm1Djece/

2017年9月24日

 

敬老の日に撮影されたと思しき写真が母の居室にあった。

 

ぼくが旅に出ている間の様子であろう。こうして画像でみるとなおさら細くなったことがよくわかる。

 

それでも相変わらず、和かな表情だ。願わくは、自分も絶えずこうありたい。

 

母を送り届けたあと、休息を確保するため直ぐに帰るつもりだったが、この隙間の時間を使って、先日候補に挙げた特養老人ホームの見学に向かうことにした。

 

同じ区内の、我が家から30分ほど車で向かった先に、いくつかの候補がまとまっている。周りの環境だけでも明るい時間帯に知っておきたかった。

 

Mapアプリを頼りに、迷うことなく次々と目的地に導かれ、外から様子を伺う。

 

 

──どれもピンと来ず──

 

 

家から一番遠い場所から当たっていき、最後は自宅最寄りの新設された場所へ。ここは先日夜中に様子を伺ったところだが、家から近いということがどれだけ大切かがよくわかった。そして電車で通うことになる家族のことを考えると、駅からの立地もとても重要だと痛感した。

 

 

「足が遠のかないように」

 

 

──母が都心の真ん中に墓を建てたのも同じ理由だった──

 

 

入所希望は、まずはここだけに絞ることにしよう。

 

本音を言えば、今、母を預けている施設に併設された特養老人ホームに受け入れてもらえることがベストなのだけれど、そこはお隣の区の管轄ゆえ区民の方が優先。審査に通る可能性が極めて低いと伝えられている。

 

でも、やはり希望だけでも出してみたい。

 

 

──母がそこに棲まう画──

 

 

それが浮かばないことには、何かがあったときに後悔するから。

 

週末、再び旅に出る前に、ケアマネージャーにその旨、伝えたい。

 

 

#主夫ロマンティック #介護 #介護者 #在宅介護 #介護独身 #シーズン5 #kawaseromantic #介護者卒業間近 #母 #老人保健施設 #入所中 #特養 #入所準備